【大峰】上迫川・モジキ谷左股
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記  めぐわんこ
2005年11月20日

【プロローグ】
今回は、キンゴ教官による私の卒業試験と言う事で出されたお題目の谷はモジキ谷。
モジキ谷・・・この谷の名前の由来はもじける(へそを曲げる)と言う言葉から来ているらしい。
たくさんの支流が入り組んでへそを曲げていると言う事が名前の由来らしい。

へそを曲げている谷・キンゴさんが選んだ谷・・・初級の沢のはずなのだが、何かが起こりそうな予感を抱えつつ堺組4人はサンバ号で待ち合わせの黒滝道の駅へ・・・
先着していたりんご畑さん・ぼっちさんと合流して宴会は深夜まで続く。


【タイトル】棚から牡丹餅
【日程】平成17年11月20日(前夜泊)
【場所】大峰・川迫川・モジキ谷左又
【メンバー】だいだらぼっちさん、りんご畑さん、キンゴさん、たこやきさん、なっちゃん、めぐわんこ
【お天気】晴れ
【地図】弥山・洞川(1/25000)


7時前に目を覚ます。今のところ起きているのはたこやきさんだけの様だ。たこやきさんの車を覗くと何とあのキンゴさんが起きているではないか。(@_@)

なっちゃんは今日もぐっすりだったが、なっちゃんに「キンゴさん、もう起きてるで」と言って起こすとすぐさま起き上がる。三週続けてキンゴさんより遅く起きたなっちゃんであった。(^_^;)
寒すぎてモチが上らないまま黒滝の道の駅を出発。
まず最初にりんご畑さんの車を稲村ヶ岳登山口近くにデポする。
ぼっちさんとたこやきさんの車で御手洗渓谷、川迫川沿いの道を走りモジキ谷の出合へ向かう。途中の紅葉はとても綺麗だった。

★ モジキ谷出合(9:15)⇒二股 (11:10)
モジキ谷出合の小広場に車を駐車。沢支度をして堰堤の様な所を越えて沢に降りる。河原状のところを通って行くが、早く降りすぎたのですぐさま谷左側のコンクリートの側壁の様なところを通る羽目に。そこを通り過ぎて谷に降りたが暫く行くと取水堰堤が見えてくる。一旦そこに登ってそこから再び谷に降りる。

開けていて白い岩の明るい谷である。なんて事はない平流を進むと最初の5mの滝が出て来る。
そこは、右側から巻いて行く。りんご畑さんは、又、壁を登っていた。

その後、綺麗なナメ床を進む。今日は、落ち葉がたくさん落ちているせいか岩でもナメでもよく滑る。このあたりは右岸に壁が立っていた。
次に谷は右に折れ、長淵の奥に7〜8mの斜滝がかかっている。ここは私とキンゴさん・ぼっちさんは右岸のバンドをつたって行った。たこやきさん達は左岸の杣道を行ったようだ。
巻き終わったところで鹿の骨が落ちていた。

その後もナメが出て来たり小滝や大きくても8m位迄の滝も数個出て来る。その度に「さあ、わんこさん、次はどっち行く?」なんて感じで教官から威圧的なお言葉が・・・でも、巻いたりなるべく濡れないように登ったりしながら進んで行く。

途中で水線から少し離れ過ぎて10点減点とキンゴ教官から注意を受けるが、「これは濡れない為の冬向きの沢の道ですよ」と言い返す。「教官に反抗したのでもう5点減点〜」と言われる。そうこうしているうちに二股に出た。(11:10)

ここまでの感想・・・難しくはないけど、落ち葉のせいかとにかくよく滑る。何でも無い所で何回か滑ってこけそうになった。
なっちゃんも滝の落ち口で1回滑って、もう少しで落ちかける所だった。二股には、赤いペンキで左はモジキ・右はバリゴヤとはっきり書かれている。ここは、迷わず左股へ。このあたりは特に何もないので少し進んだ先の伏せ流の平らな場所でお昼には少し早いが、本日のイベントの一つである味噌煮込みうどんをたこやきさんが作ってくれる。
材料は、たこやきさんが用意してくれた。ボッカはぼっちさんが担当してくれた。

日当たりのよい所でしかも谷の中で食べる初めての行動食以外のお昼タイム。めちゃめちゃおいし〜い。キンゴさんとりんご畑さんも「たまには、こんなのんびりした遡行もええなぁ〜」なんて上機嫌である。そうこのあたりまでは非常にのんびりモードでありました。
★ 二股の先の河原 (12:30)⇒ミオス尾根 (14:25)
ゆっくりと昼食を取った後出発。食べ過ぎたので少しばかりの眠気と重くなった体でゴーロ帯を進んで行く。もともと水量は少ない谷だとは、聞いていたがこのあたりはほとんど水がなかった。

途中でインゼル状になったところを左手に進む。でも、ガレた岩間を進むだけでほとんど水の流れはない。暫く行くと少し水流も現れたが、それもつかの間でまたすぐガレたルンゼ状になって行く。

二股を進んだ先に大滝があるらしいが一向に現れない。一旦、地図を出して位置を確認する。支流を1本見過ごしたみたいでどうやら本谷の左股のカレ谷に入ってしまった様である。でも、登りきったらミオス尾に乗れそうなのでそのまま進む事にする。

こんな谷慣れしたメンバーでしかも私となっちゃん以外は皆、足を踏み入れた事がある谷なのに間違ってしまう時は間違ってしまうものである。と、言うか皆、吸い込まれてしまう様に左股へ入ってしまったみたい。でも、ここで誰も引き返そうとはしないのが面白くなって行く理由なのかも・・・どうせなら今まで行った事が無くて記録も無い方が面白いに決まってるから。

さて、さて、これ以降は、谷幅もところどころどんどん狭くなって傾斜も急でルンゼ状である。しかもガレガレで掴んだホールドも崩れそうで難しくは無いけれど、足場が崩れやすいのと急登でとにかくしんどい。

どのあたりだったか忘れたが、両手・両足を突っ張って登りきると後ろでガッツ〜ンとすごい音がしたので振り向くとキンゴさんが岩に膝を打ち付けたみたい。凄く痛そう。りんごさんのアドバイスで暫く休んだ方が良いと言う事で手当も兼ねて一旦休憩。
湿布を張ってなっちゃんがテーピングを施していた。

そんなこんなでガレた急な谷をどんどん進むと尾根と思われる所に突き当たる。だが、ここもガレガレでしかも最後の乗り越しが被っていて中々上に上がれない。待っている間も落石と言うほど大げさではないが、小石がどんどん落ちてくる。

待っている間にぼっちさんが別のルートでハンマーを使って足場を作ったり滑り落ち防止に使っていたりするのを見ていて初めてハンマーが欲しいなと思いました。
上からシュリンゲを投げてもらったりして何とか乗り越すとポンと稜線に出た。踏み後は薄かったが、おそらくこれがミオス尾根であろう。


★ ミオス尾根 (14:25)⇒稲村ヶ岳山頂(17:20)
ここまで急登の連続で疲れていたので、一旦休憩。小休止を取って地図で位置を確認してから方向を決める。この尾根をつたって下山と言う手もあったのだが、時間はかかるが稲村に登頂して登山道を降りた方が確実だと言う事で進路を東に取り稲村山頂を目指す。

最初は薄いながらも踏み後もあり、ところどころ付いていたテープを辿りながら邪魔な石楠花や所々高度感のある痩せた尾根を進んで行く。ところが突然道が無くなって稲村の南にある壁状の際を細い側道を沿って行く様な感じになる。

途中で全く進めなくなり、壁も邪魔になってどっちにも行けない状態になる。進んでいる方向の途切れている先を突破できれば、その先に道らしきものがありそうなのだが、行ってみない事には分らない。どっちにしてもここを突破するにはロープが必要なのだが、こんな時に限って8mmの30Mのロープしかない。モジキ谷だと安易に思ってサブロープしか備えてなかったのでした。
さて、ここも待っているだけでも結構危なそうな場所なのでセルフビレイを取って待機。
このあたり稲村山頂まであと少しの高度なのだが、とにかく寒い。うっすらと雪化粧もしていたので恐らく氷点下であったと思われる。あまりにも寒いのでザックからフリースを出してカッパの下に着込む。だが、手が悴んで冷たい。

とりあえず突破できないものかどうかぼっちさんが空身になって進んでいる方向にロープを持って確認しに行く。しかし途中で道が落ちている場所は見事な程スパ〜と切れていたらしい。100m・・・いや200m位下に切れていて支点を取れそうな木も1本しかなかったし、あてになるかどうかも分からない。
見ているだけで怖い場所である。結局「こっちは、無理やわ。」とぼっちさんが戻ってくる。
次に登場は、反対方向を偵察していたりんご畑さん。一つ目を付けて居た所があったみたいでまずは、キンゴさんのビレイで草の根を掴めば普通に登れる木の間を登って行く。その後岩をよじ登っている所までは見えたのだが、その先はどうなってるのか全然分らない。

寒いのでふるえながら暫く待つとりんごさんからOKの合図が来たので次はキンゴさんが登って行く。その後は、1箇所腕力だけで岩を乗り越さないと行けない所があるらしくハーケンを使ってシュリンゲをセットする為、ラストに行くはずだったぼっちさんが三番手に行く事になる。
次は、私の番。向うからは笑い声と一緒に楽しそうな声が聞こえてくる。その声を聞きながらここを突破すればもう終わりかなと淡い期待を抱きながら登って行く。岩場の所でシュリンゲはセットされているのだが、あまり力をかけない様にとのぼっちさんの助言。

本当は掛けてくれたシュリンゲにあぶみの様に足をかけて乗り越せば簡単なのだが、もし、抜けてしまって使えなくなってしまったらと思い後続の二人の事を考えてここはロープと立ち木を支点にしてかけてあった別のシュリンゲを使いごぼう状態で腕力で登りきった。
登りきると、これ又、スッパーと切れている壁際のトラバースである。6〜7M程の距離なのだがこれがやたらと怖い。下は、やはり100M位?切れ落ちている。多分今まで生きてきた中で1番怖かったかも・・・
足が乗れそうなホールドを確かめる。が、最初に乗せれそうなホールドに足を試しに乗せてみると何とガラガラと崩れ落ちてしまった。これで少しびびってしまって思わず対面側の三人に「怖いかも〜。」なんて言うとキンゴさんは、「女は、度胸!」なんてほざいている。(ーー;)

いつもの事ながら渡らなきゃ帰れないよね〜と自分に言い聞かせて今、崩れた所より少し上方向に足場を見つけて勢いだけで渡ってしまう。でも、本当に怖かった。心臓に悪い。(-_-;)
ロープ等の回収があったラストのなっちゃんはもっと怖かったろうなぁ。
渡りきってしまうと少し広めの待機場所があったが、山頂はまだの様だ。これで終わりだと言う淡い期待は見事に崩れ去ったのでありました。(ーー;)
まだたこやきさんとなっちゃんが渡りきっていないので、りんごさんだけを残してぼっちさん・キンゴさん・私の三人でその先を偵察に行く。
ぼっちさんを先頭に偵察に行くと石楠花がまたもや固まっている所があったがそこを登って行く。が、又、唐突に進めなくなる。と、言う事でせっかく登った所を一旦降りるが、先行していたぼっちさんから「トラバース出来るぞ」と返事がある。(あ〜、又、トラバースかぁ)とさっきの悪夢を思い出しながら再び木の根を掴みながらぼっちさんが居る所までキンゴさんと二人で雪の上を滑りやすい沢靴で進む。

ぼっちさんと合流してからキンゴさんは後続を待つのでトラバース地点からはぼっちさんと二人で進んで行く。でも、今回のトラバースは壁ではなくてルンゼ状のところなので雪のせいで沢靴では滑って少々怖かったが無事トラバースしてどんどん登りきると稲村ヶ岳の頂上のやぐらのところに出て来た。(17:00)

山頂のやぐらでぼっちさんと二人で景色を楽しんだり写真を撮ったりして後続を待つ。この時の景色は夕闇に染まっていてとても綺麗だった。雲海に伸びる大峰の山々の稜線と夕焼けは私にとっては感動ものでした。


そうこうしている内に後続組も全員上ってきた。全員が突破して山頂まで上がって来るのに2時間近くかかった気がします。でも、暗くなる前にとりあえず山頂まで上って来れたのでほっとしました。
★ 稲村ヶ岳山頂(17:20)⇒稲村ヶ岳登山口(19:50)
さて、全員登り終えた喜びもつかの間で闇下の準備である。全員ヘッドランプを付けて登山道をどんどこ降りて行く。今まで闇の中をヘッドランプだけ付けて山道を歩くなんて・・・と思っていたが、人間の免疫力は恐ろしいもので道があるだけいいやん、なんて思い何とも思わなくなる。

行動時間がかなり長くなっているので途中の稲村小屋でトイレ休憩と非常食のパンを食べて休憩を取って宝力峠を通って下って行く。割となだらかな登山道なのでさほど標高も下がらないので結構時間がかかりました。

8時前に無事登山口近くにデポしてあったりんご畑さんの車に到着。
せっかく洞川温泉まで来ているのに結局温泉には入れずじまいでした。


【エピローグ】
は〜、前半はまったり、後半はハード。特にあの壁の突破はハードでした。と言うかかなり怖かったです。でも、稲村ヶ岳を壁から正面突破できるなんて本当に良い経験でした。

皆が皆、吸い込まれるようにして入って行ったあの本谷の左又。
平凡な谷がこんなに面白くなるなんて棚から牡丹餅とはまさしくこの事です。

谷は登り方やコースによって難しくも面白くもなる。本当にそうだと今回つくづく思いました。又、先に何があるのか分らないドキドキ感も今はまだ怖さの方が勝ってますが、ちょっと快感でした。

そうそう、壁の突破のせいであったか無かったか分らなくなった私の試験の結果ですが、56点で不合格だそうな。何でも真面目に遡行し過ぎてハメのはずし方が足りなかった?せいらしいです。こんなに面白い遡行だったのにね〜。キンゴスクールは50点以上点数があると不合格らしいです。(*_*;

不合格者は、次年度キンゴさんとペアを組んでお笑い遡行の修行をするそうな。と、言う事で今回同様キンゴさんと一緒に行くとロクな目に合わないと言うきたろうのジンクスの基に私の受難は来年も続きそうです。(^_^;)